2020.10.29 弁護士ブログ
「症状固定」
Q 私は治療中であるのに保険会社から「症状固定」だと言われましたが,「症状固定」の
ことについて説明してください。
A 症状固定の考え方は3つあります。
①は損害賠償額の計算の区切りをつけるためです。つまり,傷害による損害と後遺障害による損害の計算に区切りをつけるためです。
②後遺障害の損害を計算する基準日となります。
③後遺障害の損害の時効の起算日となります。
「症状固定日」を具体的に説明します。
症状固定は後遺障害の前提となりますので後遺障害の規定を述べます。
イ 労災(労災・障害認定必携)
負傷又は疾病がなおったときに残存する当該傷病と相当因果関係を有し,かつ,将来においても回復が困難と見込まれる障害。
ロ 自賠法施行令2条
傷害が治ったときに身体に存する障害をいう
ここで「治ったとき」とは,傷病に対して行われる医学上一般に承認された治療法をもってしても,その効果が期待し得ない状態。
平たく言えば,治療を続けてもそれ以上の改善が望まない状態のことを言います。
一般的な損害賠償の範囲では,頸椎捻挫,腰椎捻挫では6か月程度の治療で症状固定と判断されています。
四肢の骨折などでは,骨折が骨癒合した後に痛みや関節の可動域制限の症状が変化しない状態に至った時に症状固定と判断されます。具体的には,6か月~1年程度です。
◎症状固定の概念は,医学的概念ではなく損害賠償算定上の法的概念です。このことから,医師が症状固定日を決めるものではありません。
被害者と加害者が症状固定日について話し合いで決まらない時には,究極的には裁判において判断することになります。
以上