2013.8.28 スタッフブログ
執行猶予
先日、刑法上、執行猶予をつけることができない被告人に対して、裁判所が執行猶予付の判決を言い渡し、検察もその誤りに気付かず控訴せずに、違法な判決が確定したことがわかった、との報道がありました。
そもそも、執行猶予とは、ある犯罪の刑について、ある一定の期間内に再度の他の刑事事件を起こさない等の条件を付して刑の執行を猶予などし、その条件を順守して執行猶予の言渡しを取り消されずに済めば、その刑の言渡し自体が効力を失う制度です。
例えば、判決が「懲役2年」という場合には、2年間、刑務所などに行かなければならない「実刑」となってしまいます。
一方、判決が「懲役2年、執行猶予3年」という場合には、3年間、犯罪行為等をしなければ刑務所に行かずに済むが(刑の言渡し自体が効力を失う)、3年以内に別の犯罪行為をするなどし、執行猶予が取り消されたときは、前刑上記の2年と、別の犯罪行為の懲役等をあわせた期間、刑務所に行かなければならない、というものです。
この執行猶予は、どのような場合でもつけられるわけではなく、つけられる場合が刑法で決まっており、一部を抜粋すると、次のような規定となっています。
第25条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その執行を猶予することができる。
一、 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二、 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
冒頭の事件で今回は、上記の「二、」が問題となり、裁判所は、禁錮以上の刑の執行終了後5年以内の犯罪に対し、禁錮以上の判決をしたにもかかわらず、執行猶予をつけてしまい、検察もこれに気付かなかった、というものです。
裁判官も検察官も人間ですから、間違いは生じ得ますが、不平等感を生むほか、司法の信頼にも影響を与えるものですし、今回とは逆に、被告人に不利益な違法判決が見過ごされた場合は重大な人権侵害となりますので、注意が必要です。