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「後遺障害異議申立書」の事例

XX損保株式会社御中

 

             

                        弁護士法人はるか

                        

 

 被害者乙の後遺障害は,貴社の事前認定で非該当とされたが,腰痛,左下肢痛,左下肢しびれの神経症状,腰椎固定術による脊柱の変形,胸腰椎の運動障害は後遺障害等級別表第二併合第7級に該当し本件事故と相当因果関係がある。

 よって,貴社の非該当認定に対し異議を申し立てる。

 後遺障害等級別表第二併合第7級該当理由は下記のとおりである。

 

 

1.受傷機転

  平成28年9月15日に被害者乙(普通乗用車)が交差点赤信号で停止中,加害者丙(普

通貨物自動車)が追突した。

  乙運転の被害車両の修理費は21万円であった。

 

2.受傷部位と症状経過

(1)平成28年9月15日の事故から腰痛と両下肢の違和感があった。

腰痛と両下肢の違和感が軽快しないので,平成28年9月18日にA整形外科を受

診し,腰椎捻挫と診断された。

画像所見では,同日腰椎のX―P,MRIを撮影したところ,腰椎の変性変化,腰

椎L1―L2の椎間板ヘルニア,L3―L4-L5の椎間板の膨隆・後方への突出,

腰椎椎体の多くに骨棘形成などが認められた。

治療は,腰部痛に対しては消炎鎮痛処置のため理学療法,点滴を行った。また,左

下肢及び右下肢に対して物療としては両下肢のエアーマッサージ,両下肢の電気治療

を行った。

上記の治療は,初診時から症状固定日の平成29年3月29日まで継続して治療を

  行った。

 また,被害者は通院期間中にインポテンツになっていることに気が付いた。

平成29年3月29日に症状固定(第1回目の症状固定)としたのは,加害者の任

意保険会社から事故から6カ月を超えているので症状固定にしたい旨の話があったの

で,腰痛,両下肢の違和感等の症状が残っていたが,6カ月経過していたこともありや

むなく症状固定に同意した。

 ただ,症状固定後も腰痛及び両下肢の違和感の症状が改善しないので下記の病院で

治療を続けた。

 平成29年3月29日の症状固定は,以後の症状の進行状況から症状固定の状態で

はなかったと認められる。

(2)平成29年3月29日のA整形外科の症状固定後も被害者の健康保険で通院してい

たが,以下の通り症状が悪化した。

平成29年4月頃に腰痛増悪,両股関節の可動域制限,左下肢前面のシビレ,跛行

が発生した。

平成29年10月頃に右股痛,股関節運動痛,右鼡頚部の激痛・放散痛,腰から右

  大腿部にかけての疼痛左下肢のシビレが発生した。その後も,平成30年2月頃に間

  欠性跛行が発生した。

上記症状の原因を明らかにし症状の軽減を図るために,下記の病院を次々と廻り受

診したが症状の改善は見られなかった。

 ①B病院 平成29年3月~平成29年10月(実日数49日)

②C整形外科 平成29年4月17日~9月10日(実日数33日)

:腰痛,両股関節可動域制限,立位で腰痛が増強

Ð外科 平成29年10月15日~平成30年12月10日(実日数152日)

:右鼡頚部の激痛・放散痛,腰痛,腰~右大腿部にかけての疼痛

④E整形外科 平成30年3月4日~4月8日(実日数11日):腰痛,間欠的跛行

⑤F整形外科 平成30年5月21日~平成30年6月20日(実日数18日):

:腰椎の手術適応と判断し,H大学病院に紹介状を作成

⑦G整形外科 平成30年6月10日~平成30年9月25日(実日数23日)

 :腰痛,下肢痛著しい

 

(3)上記如く病院を転々としたが,腰痛,左下肢痛・シビレ,歩行障害などの症状が悪

化するばかりであったので,平成30年6月29日にH大学病院を受診した。

H大学病院での治療経過(平成30年6月29日~平成30年9月7日)については

以下のとおりである。

 イ 平成30年6月29日に初診にて,腰椎捻挫,馬尾神経障害と診断され,症状は腰

痛,左下肢痛・しびれ感・脱力,歩行障害があった。

 腰椎MRIでL1-2椎間板ヘルニア,L3-4右側とL4-5左側に椎間孔狭窄

を認めた。

  ロ 治療開始した後には症状が小康状態になったので平成30年9月7日で症状固定

(第2回目の症状固定)とした。

しかし,経過観察が必要なため平成30年12月16日の診療予約を入れている。

このことから,経過観察が必要な状態の中で,平成30年9月7日に症状固定と

したのは暫定的に症状固定としたと判断され,本来の症状固定の意義に則したものと

は認められない。

傷病名: 腰椎捻挫,馬尾神経障害

自覚症状: 腰痛,左下肢痛・しびれ感,歩行障害,右下肢しびれ感

他覚症状: 間欠性跛行,左下腿~足底に知覚鈍麻

 画像所見:腰椎X―P,MRI,CTにて,L1-L2椎間板ヘルニア,L3-L

4,L4-L5の脊柱管狭窄を認めた。

 

(4)しかし,H大学病院にて平成30年9月7日で一旦症状固定としたが,症状固定後に

両下肢状態が悪化し数歩しか自立歩行出来なくなったので,平成30年11月10日

から再びH大学病院を受診した。平成30年12月20日に腰椎の固定術をし,平成3

1年2月15日最終的に症状固定となった。

イ 平成30年9月7日で症状固定としたが,その後も腰痛,左下肢痛,左下肢しび

れ感,歩行障害,右下肢しびれ感が進行し,杖なしでの歩行が困難となった。

ロ 平成30年11月10日から,再度,H大学病院で治療を始めた。

両下肢症状の原因は第4-5腰椎の変形・脊柱管狭窄に因る腰の神経障害(馬尾神

経障害)と考えられ,改善の見込みは乏しく,下肢症状が進行する可能性が極めて高

いので,手術によって神経の圧迫を除去し,腰椎を固定するため腰椎の後方除圧固定

術をすることになった。   

 ハ 平成30年12月20日に腰椎の後方除圧固定術をしたが,手術は第4-5腰椎間

の椎弓部分切除から黄色靭帯切除を行い,神経の除圧を図り,さらに第4-5腰椎間

の椎間板切除を行い,椎体間にケージと自家骨・人工骨を挿入し,さらに椎弓根スク

リューを刺入し,スクリュー間をロットで固定して第4-5腰椎間を固定する手術で

ある。

ニ 手術後症状が改善されたので,平成31年2月15日をもって症状固定(第3回目

の症状固定)としたが,自覚症として腰痛,左下肢痛,左下肢しびれ・脱力感が残っ

た。

   ・他覚的には,左前脛骨筋,左趾背屈筋力低下(4/5),左下腿~左足の知覚鈍麻

   ・脊椎の障害として,腰椎固定術(L3ーL4-L5)

   ・胸腰椎部の運動障害として,前屈25度,後屈11度

   尚,事故後インポテンツになっているのに気付きその状態が続いていた,腰椎固定

手術後も治らなかったので,H大学病院泌尿器科を受診して,本件事故後にインポテン

ツになっている経過を説明した。そして,インポテンツを証明する検査を依頼したが,

泌尿器科では検査する医療器具ないと言われたので,インポテンツを証明する診断書

や検査資料を提出出来ないが,本件事故によりインポテンツになったことは事実であ

る。

 

3.後遺障害等級

 平成31年215日症状固定のH大学病院R医師診断の後遺障害診断書(平成31年

3月22日発行日)による。

(1)第3腰椎,第4腰椎,第5腰椎の脊椎固定術が行われているので,「脊柱に変形を残

すもの」として別表第二第11級7号に該当する。

(2)腰椎固定術(L3ーL4-L5)がおこなわれ,胸腰椎部の可動域が参考可動域角

度の1/2以下にされている(前屈25度+後屈11度=35度<参考可動域角度7

5度×1/2=37.5度)ことから,脊柱に運動障害を残すものとして別表第二第

8級2号に該当する。

(3)腰痛,左下肢痛,左下肢しびれ・脱力感は医学的に証明出来ることから,「局部に頑

固な神経症状を残すもの」として別表第二第12級13号に該当する。

以上,(1),(2),(3)より,別表Ⅱ併合第7級に該当する。

 

4.本件交通事故と後遺障害の因果関係

平成28年9月15日の事故直後から被害者は腰部痛と両下肢の違和感を感じていた。

その後も腰部痛と両下肢違和感は続くので,平成28年9月18日にA整形外科を受

診した。

同日撮影した画像を見ると,被害者の腰椎L1―L2腰椎のヘルニア,腰椎L3-L

4-L5の椎間板の膨隆・後方への突出,骨棘形成等のため脊柱管狭窄を来たし馬尾神

経を含む神経が圧迫されている。

神経の圧迫がある部分は脳脊髄液の緩衝がなく外力を直接受けるため,外部からの衝

撃を受けやすい。ちょっとしたことで神経症状が起きる。

そのため本件事故により腰部の馬尾神経,椎間板,靭帯などの軟部組織に衝撃を受け,

その結果として腰部痛と両下肢違和感を発症した。

平成22年4月頃からの腰部痛の増悪と両下肢症状の悪化の原因については,椎間板

は一旦損傷されると,筋肉や靭帯と異なりその修復は困難である。加えて,いったん損

傷を受けた椎間板は,そこからさらに変性変化が進行する性格を有すると医学的に判断

されている。

被害者の腰椎L3-L4-L5間の椎間板は変性変化により元々脆弱な状態におかれ

ていたところ,本件事故の衝撃により椎間板の損傷が加重されたため椎間板の変性変化

が進行し,平成29年4月頃には馬尾神経への圧迫と両側椎間孔の狭小化による神経根

への圧排が進んだ。

その結果として,腰痛は増悪し両下肢の違和感は左下肢痛・しびれ感,右下肢しびれ

感へと進行し,歩行障害も発生し日を経る毎に悪化した。

 最終的に平成30年10月頃には,両下肢の症状は,左下肢痛が増悪し疼痛のため自

立歩行が数歩しかできず,杖なしでの歩行が困難な状態となった。症状が進行する恐れ

があるため手術適応と判断され,平成30年12月20日に腰椎L3-L4-L5の固

定手術を行った。

  事故発生より平成31年2月15日の症状固定まで約2年6カ月と長期になるが,上記

に記載した通り,本件事故の衝撃により,腰椎L3-L4-L5の椎間板や軟部組織が

損傷され,その損傷により腰椎L3-L4-L5の椎間板の変性変化が早められ進行し

たため,馬尾神経への圧排が進み馬尾神経障害の神経症状増悪が予測され腰椎固定術に

いたったものである。

したがって上記経過から,本件事故と腰痛,左下肢痛,左下肢しびれ,腰椎固定によ

る脊柱の変形,胸腰椎の運動障害等の後遺障害等級併合第7級は相当因果関係がある。

 なお,別紙添付,H大学病院R医師の医療照会の回答書(平成31年3月15日付作

成)においても,本件事故と平成31年2月15日症状固定時に残存した後遺障害との

因果関係は否定できないと診断していることは,本件事故との相当因果関係を認めてい

る。

                                    以上

 

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