Ⅰ 膝関節の可動域制限の後遺障害について
Q1: 右脛骨の骨頭を骨折し手術をしたが,リハビリ続けているが膝関節の曲がりが悪く
痛みもあります。後遺障害になるでしょうか。
Q2: 左膝関節を骨折したが,右膝の可動域が左に比べてよくない,後遺障害として認め
られるのはどの程度曲がらない場合ですか。
Q3: 右膝関節を骨折して手術をしたが,主治医に可動域制限の後遺障害が残るかもしれ
ないと言われましたが後遺障害の等級を教えてください。
Q4: 左膝関節の前十字靭帯を断裂したので靭帯再建術をしましたが膝の痛みと可動域
制限があります。後遺障害と認められる状態を教えてください。
Q5: 右下肢を骨折してギブス固定をして治しましたが膝関節の曲がりが悪くなりリハ
ビリしてもよくなりません。後遺障害になるのでしょうか。
Q6: 右膝の半月板を損傷しました。膝を曲げると痛くて曲げられません。後遺障害は何
級が考えられますか。
Q7: 左下腿を骨折と外側側副靭帯も一部断裂しました。リハビリ中ですが膝関節の痛み
と可動域制限があります。皆が後遺障害だと言いますが後遺障害として認めてくれ
るか不安です。
Q8: 左膝の膝蓋骨を骨折し手術をしましたが,膝を曲げると痛くよく曲がりません。後
遺障害になってしまうのか心配です。
Q9: 右大腿骨の遠位端を骨折し手術で固定しましたが,1年後に抜釘したが右膝の痛み
と可動域制限が残っています。保険会社からは症状固定にして後遺障害の申請をす
ると言われましたが,どの程度で後遺障害と認められるのでしょうか。
Q10: 自転車に乗っていて車と衝突し右膝を打撲しました,レントゲンでは異常が無く
骨折や靭帯損傷はありませんが右膝の痛みが続き右膝が曲がりにくい状態です。後遺障害として認められますか。
Q11: 駐車場でバックしてきた車と衝突転倒して左臀部と左膝を打撲しました。臀部
の痛みは良くなりましたが左膝の痛みと左膝が曲がりにくいのが続いています。後遺症になるのでしょうか。
Q12: 右膝を打撲して痛くて膝が曲がりません。後遺障害として残るのでしょうか。
Q13: 右脛骨骨頭部を骨折しましたが,高齢だからと人工関節を入れました。後遺障害
はどの程度になるのでしょうか。
Q14: 左大腿骨骨幹部骨折で,左膝の方から髄内釘を入れて固定をしました,大腿骨は
骨癒合したのですが左膝の曲がりにくさと痛みがあります。後遺症でしょうか。
【膝関節の可動域制限の後遺障害等級について】
①「単なる機能障害」12級7号は,膝関節の屈曲・伸展の角度を測定して決めます。
患側(負傷した膝)の可動域が,健側(負傷していない膝)の可動域の4分の3以
下に制限されている場合です。
例:健側の可動域140度の場合は,健側の4分の3以下になるのは患側の可動域
が105度以下になる場合です。
注1:関節の可動域の測定値は他動値を採用します。
但し,神経損傷により可動域制限が生じている場合は自動値を採用します。
注2:関節の可動域の比較は他動値で健側の可動域と患側の可動域を比較します
が,健側の膝関節に既往障害がある場合には,参考可動域角度と比較します。
膝関節の参考可動域角度は130度です。
屈曲 130度
伸展 0度
②「著しい機能障害」10級11号は,患側の可動域が健側の2分の1以下に制限
されている場合です。
または,人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節の内,その可動域が健側の可動
域角度の1/2以下に制限されていないものをいいます。
例:健側の可動域が130度の場合は,健側の2分の1以下の65度以下となる
場合です。
③「関節の用を廃したもの」8級7号は,関節が強直したもの,関節の完全弛緩性
麻痺またはこれに近い状態にあるもの,あるいは人工関節・人工骨頭を挿入置換
した関節が,その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されたものをい
います。
注3:膝関節の可動域制限の原因が,骨折の変形癒合,靭帯損傷,半月板損傷,神
経麻痺によることがレントゲン,CT,МRIなどで他覚的に証明できることが
必要です。
質問1:貴方の傷病名
①膝打撲・捻挫
②大腿骨顆部骨折(大腿骨遠位端骨折)
③膝蓋骨骨折
④脛骨近位端骨折(脛骨顆部骨折),脛骨高原骨折
⑤外側側副靭帯損傷又は断裂
⑥内側側副靭帯損傷又は断裂
⑦前十字靭帯損傷又は断裂
⑧後十字靭帯損傷又は断裂
⑨半月板損傷
⑩膝関節に人工関節置換術を行った
質問2:質問1で①と答えた方
①膝の可動域制限と痛みが残っている。
②膝の可動域制限と痛みは軽快してきた。
質問3:質問2で①と答えた方
①6か月以上治療している。
②治療期間が6か月未満である。
A1:質問3で①と答えた方
症状固定時期に来ていますが,レントゲンやМRIで骨折や靭帯の損傷が無け
れば膝の可動域制限や痛みを裏付ける他覚的所見が無いため後遺障害非該当の
恐れがあります。
A2:質問3で②と答えた方
症状固定時期に来ていませんが,症状固定となった場合にレントゲンやМRI
で骨折や靭帯の損傷が無ければ膝の可動域制限や痛みを裏付ける他覚的所見が
無いため後遺障害非該当の恐れがあります。
質問4:質問1で②と答えた方
①大腿骨顆部骨折(大腿骨遠位端骨折)の観血的骨接合術の手術後1年経
過している。
②大腿骨顆部骨折(大腿骨遠位端骨折)の観血的骨接合術の手術後1年未
満の方
A3: 質問4で①と答えられた方
症状固定の時期になっています。抜釘手術後に膝関節の患側と健側の他動
値を主治医に計測してもらって後遺障害診断書を作成してください。
可動域制限の原因が大腿骨顆部が不正癒合(変形癒合)による場合は,膝関
節の他動値が患側の可動域が健側の可動域の3/4以下に制限されていれば,
12級7号「膝関節の機能障害」として認められる可能性が大です。
患側の可動域が健側の可動域の1/2以下に制限されていれば,10級11
号「関節の機能に著しい障害」が認められる可能性が大です。
尚,膝痛は可動域制限の原因と同じですから12級に含まれます。
また,膝関節の可動域制限が他動値で患側の可動域が健側の可動域の3/4
以下に制限されていない場合は12級7号「膝関節の機能障害」に該当しま
せんが,膝関節痛については「局部に頑固な神経症状を残すもの」として12
級13号が認定される可能性が大です。
A4: 質問4で②と答えた方
術後1年経過したら症状固定の時期ですので抜釘手術後に後遺障害診断書
を作成してください。
質問5:質問1で③と答えられた方
①膝蓋骨骨折の観血的骨接合術後1年経過している。
②膝蓋骨骨折の観血的骨接合術後1年未満である。
A5:質問5で①と答えた方
膝蓋骨骨折骨接合手術後1年経過していますので症状固定の時期です。抜釘
の手術後に後遺障害診断書を作成してください。膝蓋骨の変形癒合や大腿膝
蓋関節の不正が認められる場合は,膝関節の患側の可動域が健側の可動域の3
/4以下に制限されていれば,12級7号「膝関節の機能障害」として認めら
れる可能性が大です。
尚,膝の痛みは原因が同じなので12級に含まれます。
また,膝関節の可動域制限が他動値で患側の可動域が健側の可動域の3/4
以下に制限されていない場合は12級7号「膝関節の機能障害」に該当しま
せんが,膝関節痛については「局部に頑固な神経症状を残すもの」として12
級13号が認定される可能性が大です。
A6:質問5で②と答えられた方
術後1年経過したら症状固定の時期ですので抜釘手術後に後遺障害診断書
を作成してください。
質問6:質問1で④と答えられた方
①脛骨近位端骨折(脛骨顆部骨折,脛骨高原骨折)の観血的骨接合術後1
年を経過している。
②脛骨近位端骨折(脛骨顆部骨折),脛骨高原骨折の手術後1年未満であ
る。
A7:質問6で①と答えられた方
症状固定の時期になっています。抜釘手術後に膝関節の患側と健側の他動
値を主治医に計測してもらって後遺障害診断書を作成してください。
可動域制限の原因が脛骨近位端骨折((脛骨顆部骨折,脛骨高原骨折)面の
が不正癒合(変形癒合)による場合は,膝関節の患側の可動域が健側の可動域
の3/4以下に制限されていれば,12級7号「膝関節の機能障害」として認
められる可能性が大です。
尚,膝痛は可動域制限の原因と同じですから12級に含まれます。
また,膝関節の可動域制限が他動値で患側の可動域が健側の可動域の3/4
以下に制限されていない場合は12級7号「膝関節の機能障害」に該当しま
せんが,膝関節痛については「局部に頑固な神経症状を残すもの」として12
級13号が認定される可能性が大です。
A8:質問6で②と答えられた方
術後1年経過したら症状固定の時期ですので抜釘手術後に後遺障害診断書
を作成してください。
質問7:質問1で⑤と答えられた方
①外側側副靭帯損傷又は断裂でギプス固定を除去した後または靭帯縫合
術後6か月経過している。
②外側側副靭帯損傷又は断裂でギプス固定を除去した後又は靭帯縫合術
後6か月未満である。
A9:質問7で①と答えた方
ギプス固定除去後または靭帯縫合術後1年経過していますので症状固定の
時期です。靭帯損傷部の修復の不全が認められるか,膝関節の拘縮が認められ
る場合は,膝関節の患側の可動域が健側の可動域の3/4以下に制限されてい
れば,12級7号「膝関節の機能障害」として認められる可能性が大です。
尚,膝の痛みは原因が同じなので12級に含まれます。
また,膝関節の可動域制限が他動値で患側の可動域が健側の可動域の3/4
以下に制限されていない場合は12級7号「膝関節の機能障害」に該当しま
せんが,膝関節痛については「局部に頑固な神経症状を残すもの」として12
級13号が認定される可能性が大です。
A10:質問7で②と答えた方
ギプス固定除去後または靭帯縫合術後6か月経過したら症状固定の時期
なので後遺障害診断書を作成してください。
質問8: 質問1で⑥と答えられた方.
①内側側副靭帯損傷又は断裂でギプス固定を除去した後または靭帯縫合
術後6か月程度経過している。
②内側側副靭帯損傷又は断裂でギプス固定を除去した後または靭帯縫合
術後6か月未満である。
A11:質問8で①と答えた方
ギプス固定除去後または靭帯縫合術後6か月程度経過していますので症
状固定の時期です。靭帯損傷部の修復の不全が認められるかまたは膝関節
の拘縮が認められる場合は,膝関節の患側の可動域が健側の可動域の3/4
以下に制限されていれば,12級7号「膝関節の機能障害」として認められ
る可能性が大です。
尚,膝の痛みは原因が同じなので12級に含まれます。
また,膝関節の可動域制限が他動値で患側の可動域が健側の可動域の3/
4以下に制限されていない場合は12級7号「膝関節の機能障害」に該当し
ませんが,膝関節痛については「局部に頑固な神経症状を残すもの」として
12級13号が認定される可能性が大です。
A12:質問8で①と答えた方
ギプス固定除去後または靭帯縫合術後6か月経過したら症状固定の時期
なので後遺障害診断書を作成してください。
質問9:質問1で⑦と答えた方
①前十字靭帯損傷又は断裂でギプス固定除去後または靭帯縫合術または
人工靭帯形成術後6か月程度経過している。
②前十字靭帯損傷又は断裂でギプス固定除去後または靭帯縫合術または
人工靭帯形成術後6か月未満である。
A13:質問9で①と答えた方
ギプス固定除去後または靭帯縫合術後または人工靭帯形成術後6か月程
度経過していますので症状固定の時期です。靭帯損傷部の修復の不全が認
められるかまたは膝関節の拘縮が認められるか,あるいは人工靭帯形成術
をしても関節可動域の改善が制限されている場合,膝関節の患側の可動域
が健側の可動域の3/4以下に制限されていれば,12級7号「膝関節の機
能障害」として認められる可能性が大です。
尚,膝の痛みは原因が同じなので12級に含まれます。
また,膝関節の可動域制限が他動値で患側の可動域が健側の可動域の3/
4以下に制限されていない場合は12級7号「膝関節の機能障害」に該当し
ませんが,膝関節痛については「局部に頑固な神経症状を残すもの」として
12級13号が認定される可能性が大です。
A14:質問9で②と答えた方
ギプス固定除去後または靭帯縫合術後または人工靭帯形成術後6か月程
度経過したら主治医に後遺障害診断書の作成を依頼してください。
質問10:質問1で⑧と答えた方
①後十字靭帯損傷又は断裂でギプス固定除去後または靭帯縫合術また
は人工靭帯形成術後6か月程度経過している。
②後十字靭帯損傷又は断裂でギプス固定除去後または靭帯縫合術また
は人工靭帯形成術後6か月未満である。
A15:質問10で①と答えられた方
ギプス固定除去後または靭帯縫合術後または人工靭帯形成術後6か月程
度経過していますので症状固定の時期です。靭帯損傷部の修復の不全が認
められるかまたは膝関節の拘縮が認められるか,あるいは人工靭帯形成術
をしても関節可動域の改善が制限されている場合,,関節の患側の可動域
が健側の可動域の3/4以下に制限されていれば,12級7号「膝関節の機
能障害」として認められる可能性が大です。
尚,膝の痛みは原因が同じなので12級に含まれます。
また,膝関節の可動域制限が他動値で患側の可動域が健側の可動域の3/
4以下に制限されていない場合は12級7号「膝関節の機能障害」に該当し
ませんが,膝関節痛については「局部に頑固な神経症状を残すもの」として
12級13号が認定される可能性が大です。
A16:質問10で②と答えられた方
ギプス固定除去後または靭帯縫合術後または人工靭帯形成術後6か月程
度経過したら主治医に後遺障害診断書の作成を依頼してください。
質問11:質問1で⑨と答えた方
①半月板損傷後または半月板縫合術後あるいは半月板切除術後6か月
経過している。
②半月板損傷後または半月板縫合術後あるいは半月板切除術後6か月
未満である
A17:質問11で①と答えた方。
半月板損傷後または半月板縫合術後あるいは半月板切除術後6か月リハ
ビリ等を続けたが半月板の器質的変化などにより,関節の患側の可動域
が健側の可動域の3/4以下に制限されていれば,12級7号「膝関節の機
能障害」として認められる可能性が大です。
尚,膝の痛みは原因が同じなので12級に含まれます。
また,膝関節の可動域制限が他動値で患側の可動域が健側の可動域の3/
4以下に制限されていない場合は12級7号「膝関節の機能障害」に該当し
ませんが,膝関節痛については「局部に頑固な神経症状を残すもの」として
12級13号が認定される可能性が大です。
A18:質問11で②と答えた方
半月板損傷後または半月板縫合術後あるいは半月板切除術後6か月程度経
過した時期に主治医に後遺障害診断書を作成してもらってください。
質問12:質問1で⑩と答えた方
①膝関節に人工関節置換術を施行してから6か月程度以上経過している。
②膝関節に人工関節置換術を施行してから6か月未満である。
A19:質問12で①と答えた方
膝の人工関節置換手術後リハビリを続けて6か月程度以上になっているこ
とから症状固定時期に来ていると判断されます。
主治医に後遺障害診断書を作成してもらってください。
患側の膝関節の可動域が健側の可動域の1/2以下に制限されていない場
合は「膝関節に著しい機能障害を残すもの」として10級11号が認定される
と考えて差し支えないと判断されます。
尚,膝の痛みは原因が同じことから上記等級に含まれます。
また,患側の膝関節の可動域が健側の1/2以下に制限されていれば「膝関
節の用を配したもの」として第8級7号が認定される可能性が大です。
A20:質問12で②と答えた方
膝関節に人工関節置換手術後リハビリを行い6か月程度経過した時期に主
治医に後遺障害診断書を作成してもらってください。