2023.5.22 相続
遺留分について
1.遺留制度
遺留制度の趣旨としては,最高裁―小判決(平成13年11月22日)に下記のように書かれています。
「遺留分制度は,被相続人の財産の処分の自由と身分関係を背景とした相続人の諸権利を調整するものである。
民法は,被相続人の財産処分の自由を尊重して,遺留分を侵害する遺言について,いったんその意思どおりの効果を生じさせるものとした上,これを覆して侵害された遺留分を回復するかどうかを、専ら遺留分権利者の自律的決定にゆだねたものということができる。」
2.遺留分の侵害
遺留分の侵害とは,被相続人が自由分を越えて処分をし,その結果,相続人が現実に受ける相続利益が法定の遺留分に満たない場合です。
なお,遺留分侵害行為は,当然無効となるのではなく,単に侵害請求をなし得るにとどまります。
3.遺留分権利者の範囲
遺留分権利者は,相続人のうち,被相続人の配偶者,直系卑属,直系尊属です。
兄弟姉妹は除外されますが,子の代襲相続人も遺留分権利者となります。
4.遺留分算定の財産額
相続開始時の遺産(遺贈も含む)に贈与を加えて,そこから債務の全額を控除して得た額です(民法1029条1項)。
5.遺留分侵害請求の行使の期間
遺留分侵害請求権は,遺留分権利者が,相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺産があったことを知った時から1年間行使しないときは,時効になって消滅します。相続開始の時より10年を経過した時も同様に時効になります。
6.遺留分の放棄
遺留分権利者は,遺留分を放棄することができます。
相続開始前に遺留分の放棄をするには,家庭裁判所の許可かが必要となります(民法1043条1項)。相続開始後の遺留分の放棄は自由にできるので,家庭裁判所の許可はいりません。
7.遺留分侵害請求の例
例1:被相続人Aは妻Bに全財産を相続させるとの遺言を残していました。
相続人は,妻Bと子C,被相続人Aと前妻との間にできた子Dでした。
Dは遺留分侵害請求の調停を申し立てました。
被相続人の遺産は8000万円でした。
Dの遺留分は法定相続分1/4×1/2の1/8となります。
Dの遺留分は1000万円(8000万円×1/8)となりました。
Dの遺留分1000万円をBに対して遺留分侵害請求を行うことになります。
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